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面倒臭い男に惹かれる

 Twitter松村北斗くんがこれまで演じてきた役柄の中で誰が一番好きかというアンケートが回ってきた時、私は真剣に考えた。役柄としての魅力ならばもちろん浅田哲也くんに投票したと思う。これまでの私ならば迷うことなくそうしていた。けれど私は、この中で付き合うなら誰かとも考えてみた。すると答えはバニラボーイで北斗くんが演じた林秀男になった。
 ここで私の中の好みのタイプを根底から覆されてしまったのだとはっきりと確信した。これまでは憧れやすいかっこよさと優しさ、もしくは親しみやすさがある人を好きになってきたと思う。愛が重くなるタイプやどこか達観しているような人は好みじゃなかった。それは私自身が俯瞰で物事を見てしまうことがあるからという自覚もあっての考えだった。
 つまりこれまでの私ならば付き合うことを考えても浅田哲也の一強だった。それがなぜ林秀男に動いたかといえば理由はただ一つ、最も私の中の松村北斗という人物像に近いからだ。本当の彼の姿は私も知らない。けれど私の見ている北斗くんは限りなく林秀男という役柄に近いものを感じた。
 自信家で、物事を冷静に分析、判断しようとする。冷たく見えて実は熱い。このあたりだけ見れば浅田哲也にも思えるがさらに北斗くんらしいところは高校生姿だと思う。北斗くんは恐らく教科書はきちんと出すだろうし、寝る時ももう少し上手く寝るだろう。しかし女子に言い寄られた時の対応や、よく分からない興味対象。好きなもの、分野においてしゃべりだすと止まらなくなる。松村北斗という男に近いものを感じざるを得ないと私は思った。そしてこのタイプの男性が身近に居た場合恐らくクラスメイト達と同じように、「なんかムカつく」と思うだろう。顔はイケメンなのに、……ねぇ。と堂々と寝ている姿を見ては思う女子は多いだろうし、私もそう思っていたはずだ。
 それがなぜ付き合いたいとまで思うようになったか。それは彼の面倒くさい部分もまるっと受け入れ可愛いと思いたい、そんな女に私はなりたい。と結論が出たからだ。
 林くんはアレで彼女には勉強を教えてくれるタイプだと思う。そして教え方も自分が全てしっかりと理解しているからこそ的確で上手い。1聞いたら20は返ってくるであろう質問への回答もうんうん、そっかと笑って一生懸命語る彼の綺麗な横顔を眺める時間と思えばなんの苦にもならない。デートする場所は分刻みのスケジュールのもと徹底管理されているだろうがそうしてまで喜ばせようとしてくれている姿にときめくこと間違いなし。多少のズレで予定通りに行かなければこんな事もあるよと笑いかけてあげたいと思うし、リベンジを申し出されれば応じるだろう。そして彼の中心にはいつも私ではない違う人がいることも理解する。とことん林くんにとって都合のいい女である。喧嘩をしても口で負けるのは私だ。統計学的にと喧嘩中に言われてさらに怒ってもその上を行く統計学で黙らされたい。ただ一つピンクのシャツは着ないで欲しいという要望だけは聞いて欲しい。
 ここまでリアルに林秀男という人物と付き合う想像をして、付き合える、付き合いたいと思った為、私は林秀男に投票した。
 私が考える松村北斗と付き合ったら、という妄想で林秀男と違う点はいくつかある。まず、デートにはほとんど行かない。行ってもスケジュールは大して組まないだろう。雑誌の回答では敢えておかしな場所を本人も自覚しながら選んでいるところを見ると本当に行くにせよどこまでならこの女は許容するのかを試されていそうだなと思う。面倒くさい。
 彼の中心はもちろん仕事だろうしそれに異論もない。仕事と私どっちが大事なのと言われることを嫌うだろうがまず間違いなく言われるタイプだ。会った時には態度に出して甘えてくれるのに会えない時は寂しいと思ってくれているのか不安になるほどの連絡頻度や、やり取りの内容が想像される。ちなみにどっちが大事かと聞かれたら「そんな当たり前なこと聞くなよ」とどちらとも取れないことを言うだろうが全てあの顔と声に丸め込まれるだろう。面倒くさいというより確信犯だ。
 ここまであげてきた林秀男との異なる点を見るともはや林くんと付き合いたいと思うほど林くんの面倒臭さが可愛らしく思えて仕方がない。
 北斗くんはきっと好きかと聞いても好きだよとすぐには言ってくれないだろうし、喧嘩をしたら統計学と言わない代わりに有り余る語彙力で説き伏せられるだろう。周りの友人に良い所なんて顔だけでしょ?と言われてしまうことがほとんどだろう。それでも顔も良いけどなんだかんだ可愛いんだよ、と笑って言える女に私はなりたい。